上簇




 孵化したときはこんなに小さかったのに、
 たくさんの桑の葉を食べて、立派に成長。


おおよそ1か月の間、毎日お蚕さんの成長を見ながら、

上簇を迎えるその時のイメトレを毎日行ってきました。



前回の上簇で手間取った部分を改善するべく、

『こうなった時はこうしよう。』

『この道具はこの動線に配置しよう。』

あれやこれや考えました。


結果、全てがイメージ通りにとはいかず、相変わらずのてんやわんやな上簇でしたが、

毎回勃発する新たな課題をひとつづつクリアしながら、

お蚕さんに負荷をかけず、快適に営繭に入ってもらえるよう、

これからも知恵を絞り続けていこうと思います。



上簇は2日間、夜通しで行いました。

仕事を終え、手伝いに来てくれた姉。

ここから丸一日、ノンストップでお蚕さんを拾い続けてくれました。



育蚕期、気持ちに余裕を持てない私を気遣い、励ましてくれながら、

『きつい』の一言も言わずお蚕さんの事を第一に考え手伝ってくれる姉。

昨年まではお蚕さんを触ることもできなかったのにね。。

今では熟蚕を見分けるのが、私よりうまいかも。


厳しい上簇を、気心知れた姉と乗り越えれることは、とても幸せなのだと思います。



一段落ついた真夜中、姉とコーヒーを飲みながら夜空を見上げたら、

びっくりするほど綺麗に光った月と、満天の星空でした。



今回の春蚕の飼育は、新しく引っ越した蚕室で行いました。

この場所で育蚕を行えることは、私の人生にとって奇跡のようなものだと思っています。



無事に上簇してくれたお蚕さん。

この場所を与えてくださった方々。

色んな事を教えてくれる先輩農家の方々。

優しい姉。

丈夫な体に育ててくれた両親。

いつも心配してくれる周囲の方々。

自然や、私の存在を許してくれている全てのもの。



星空を眺めながら、感謝の気持ちがどわーっと溢れてきました。

本当にありがとうございます。



上簇を終えて、疲れも含めて一気にいろんなものが溢れてきましたが、

育蚕も畑仕事もまだまだ続きます。

気を抜かず努めます。
出荷の準備に取り掛かる先輩農家さん。

うかうかしちゃいられない。